酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

花散らしの雨

花散らしの雨 みをつくし料理帖

花散らしの雨 みをつくし料理帖

元飯田町に新しく暖簾を掲げた「つる家」では、ふきという少女を下足番として雇い入れた。早くにふた親を亡くしたふきを、自らの境遇と重ね合わせ信頼を寄せていく澪。だが、丁度同じ頃、神田須田町の登龍楼で、澪の創作したはずの料理と全く同じものが「つる家」よりも先に供されているという。はじめは偶然とやり過ごすも、さらに考案した料理も先を越されてしまう。度重なる偶然に不安を感じた澪はある日、ふきの不審な行動を目撃してしまい・・・。書き下ろしで贈る、大好評「みをつくし料理帖」シリーズ、待望の第二弾!

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 つい先日読んだばかりの「八朔の雪」の続編、「みをつくし料理帖」シリーズの第二巻です。「つる家」という料理屋を中心に、それぞれ複雑な過去と背景をもった登場人物達が織りなす人間ドラマなのですが、早くもこの第二巻でだいぶ落ち着いてしまったかのような印象を覚えます。

 とはいえ、上の紹介文にあるように「ふき」という新たな少女も加わったし、相変わらず謎のままの人物もいます。しかも今作も事件の連続です。登龍楼との争い、ふきの謎、伝染病との戦い、長屋の暮らし、江戸と大坂の食文化。あさひ太夫との友情、大坂の記憶などなど。しかし四編に区切られた物語は、常に料理を中心に構成されており、背後に流れるそれらの人間ドラマはまた別方向の軸をもって複雑に織りなされています。なのにスッキリと読みやすく、ストーリーがわかりやすく、纏まっていて読者をぐいぐいと「つる家」へと引き込んでいきます。

 でも、主人公たる「澪」がすっかり「つる家」に落ち着いてしまいました。前作まであった、まだ若くて、料理人として未熟で、しかも江戸の食文化にまだ慣れていないが故の失敗と試行錯誤。努力の末に生み出される新しい料理。そこまでする澪が目指す目標は天満一兆庵の再建... と言った部分のストーリーが弱まってしまったのが残念です。

 澪はスーパーウーマンになりすぎていないかな?という点に少し違和感を感じ、このシリーズの背後に流れる太い縦糸のストーリーは何だっけ?と、まるで佐伯泰英さんのシリーズものの十巻以降を読んでるかのような錯覚に陥ってしまいました。これは私の勝手な好みの問題なのだと思いますけど。

 一方で、意外な展開も見え隠れしました。と言うのも料理に打ち込んでいるとは言え、澪は年頃の女性。何となくこれはアレかな?と思っていたのが、とても意外な方向へ動き始めました。これは先が気になります。いったい澪の恋路はどうなるのか?それこそ「雲外蒼天」なのか? なんだかんだで先を読まずにはいられません。

 【お気に入り度:★★★☆☆】