酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

最後の忠臣蔵

最後の忠臣蔵 (角川文庫)

最後の忠臣蔵 (角川文庫)

四十七士ただ一人の生き残り、寺坂吉右衛門の人知れぬ煩悶。血戦の吉良屋敷を後にして高輪泉岳寺に引き揚げる途次、足軽・寺坂吉右衛門は大石内蔵助に重大な役目を与えられる。生き延びて戦さの生き証人となれ。死出の旅に向かう四十六人を後に、一人きりの逃避行が始まった。

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 季節外れの忠臣蔵もの小説です。帯には大きく「映画化!」の文字。今年の12月公開だそうで、なるほど映画はちょうど忠臣蔵シーズンにやるわけですね。数ある忠臣蔵を題材にした小説のなかで、この作品の特徴は四十七士として吉良低討ち入りに加わりながら、その後も生き延びた謎の人物を主人公に据えていることです。彼が姿を消した理由とは何なのか? その後どのようにして生きていたのか? 俄然興味が沸いてきます。

 が、読み始めてみてその期待は失望に変わりました。いや、失望というのは言い過ぎかも。いずれにしろ、残念なことに私の好みとは合わない物語展開で始まり、その後も読み進めるのに非常に苦労してしまいました。約300ページの文庫本とくれば、普通は数日で読み終わるものですが、この本には実に2週間もの時間をかけてしまいました。

 寺坂吉右衛門と赤穂浅野家の遺臣たちの行く末というテーマ全体には興味があり、先が気になるには気になるのですが、物語の細部の描写というか語り口が喉につかえるというか、何とも飲み込みにくい物語でした。あまりにも文章、文体がハードボイルドすぎて、私には読み取れないだけなのかもしれません。

 そんな飲み込みにくさは、大石内蔵助という忠臣蔵の最も重要な中心人物の描き方に現れています。ここに描かれる内蔵助はあまりにも完全無欠すぎて芝居がかりすぎに感じるのです。私個人的には、忠臣蔵のおもしろさというのは、浪士達の「人間臭さ」にあると思っています。大石内蔵助も含めて。

 しかし結末はとても秀逸です。最後のシーンは小説のクライマックスとしては素晴らしいものです。おそらく映像化したら多くの人の涙を誘うことでしょう。

 【お気に入り度:★★☆☆☆】