酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

2010年F1第10戦 イギリスGP

 毎年必ず「伝統の」という枕詞とともに語られるイギリスGP。60年前にF1の第1戦目が行われたのがこのシルバーストーン・サーキットでした。今年はコースが大改修され、後半のセクションが大幅に変更されました。コース長も伸びてはいるものの、高速コーナーが連続する基本的な特徴は変わっていません。連続S字など含めコース特性は実は鈴鹿サーキットと似ていると言われています。

 そんな中、予選で圧倒的な速さを見せフロント・ロウを独占したのはレッドブル。こういう特性のコースはそもそも大得意です。そこに食らいつくのは純イギリスチーム、マクラーレン。速さは戻ってきたのに不運に見舞われて結果が残せないフェラーリ。中段以降ではウィリアムズも調子を上げてきました。今度こそレッドブルが独走する退屈なレースになるかと思えば... 今回もまた目が離せない展開の連続となりました。今年のレースは本当に面白い!

「忌々しいイギリスGPに優勝したばかりなのに」 クリスチャン・ホーナー/レッドブル

 優勝を飾ったそのレースを「忌々しい」と表現したのは、レッドブルのチーム代表クリスチャン・ホーナーです。彼は今、かつてマクラーレンのロン・デニスが味わった悩みを抱えています。速いマシンに速いドライバー2人を擁する幸運なF1チームがたどるべき運命とも言えます。
 トルコGP以降沈静化していたウェバーとヴェッテルの内紛が、今回再び表面化した原因はホーナー自身の決断にありました。ヴェッテルが土曜のフリー走行で壊してしまった新型のフロントウィング。ホーナーはウェバーのマシンについていた残り一つの新ウィングをヴェッテルのマシンに付け替え、ウェバーに旧型ウィングを使わせるという仰天の決定を下しました。その根拠は「ポイントの多いドライバーを優先する」というものです。これはこれで一理あります。
 しかしウェバーにしてみれば面白くありません。彼は土曜日はもちろん、レース優勝後もこの件について辛辣な言葉を口にしています。「No.2ドライバーにしては上出来だ」とか「No.2扱いだと知っていたら来年の契約はしなかった」とか。優勝して溜飲を下げたかもしれませんが、怒りはまだ収まっていない様子です。
 一方、ヴェッテルは「僕にも意見があるが内緒だ」というコメントを残したのみ。スタート直後の1コーナーでコースアウトしパンクしたのは、ウェバーに押し出されたせいにも見えたのですが。今は何もしゃべらない方が得だということなのかもしれません。
 全体的に考えてウェバーの怒りに理はあると思えるのですが、その後の対応が正しいかどうかは別問題です。しかもレッドブルにとってヴェッテルの方が"商品価値"が高いのは公然の秘密なわけですし。
 それに... 一ファンの目から見てると、何しろウェバーのバトルは下手くそすぎです。ブロックするときは相手を押しだし、チャレンジする場合は追突してしまう、そんなシーンを去年からいったい何回見たことでしょう? 個人的には、チャンピオンの器があるとは到底思えません。 ウェバーとの契約は破棄して、キミをカムバックさせればいいのに(ボソッ

「彼がもっと速く走れただろうと考えているよ」 ベーター・ザウバー/ザウバー

 小林可夢偉について、前々戦の観戦記で「"次はがんばります"はもう許されない」と書いたことを重ねて悔やんでいます。ペーター・ザウバーもカナダGPまではかなり厳しいコメントを残していましたが、この2戦は褒めちぎりです。素晴らしいレースをして結果を残しているのですから当たり前です。
 小林は前戦のレースが奇跡ではなかったことを今回のレースで証明して見せました。予選こそ12位とチームメイトに及ばなかったものの、スタートでいきなりポイント圏内に入ると、序盤の混乱を上手く切り抜け、そのままペースを維持しポジションを守りきりました。
 しかも見た目にも我慢のレースと言うよりは、攻めていたようにさえ思えます。序盤はバトンに食らいついていき、ピットアウト後はシューマッハの追撃をかわし、終盤はバリチェロを追いかけ回しました。ラップペースも悪くはなく、タイヤもしっかりとマネージメントし、まさに現在のザウバーと小林にとっては理想的なレース運び。
 となると、やはり今後の課題は予選に尽きます。レースでのラップペースからすればシングルグリッドが取れてもおかしくないくらいです。実際チームメイトのデ・ラ・ロサは今回Q3まで進みました。上位グリッドからスタートを決めて、今回のように走りきれば、もっと上が狙えそうです。
 そのためには、もちろん継続的なマシンの開発も必要と思いますが、ペーター・ザウバーはじめザウバーチームにとって、後半戦に向けての心配点は実はそこかも知れません。

「これ以上の結果は望めなかっただろう。」 マーティン・ウィットマーシュ/マクラーレン

 レッドブルを追撃すべく持ち込んだ新型ディフューザーがうまく機能せず、土曜になって使用を取りやめるなどのドタバタが影響し、予選ではレッドブルに完敗してしまったマクラーレン。ここイギリスGPはチームにとっても2人のドライバーにとってもホームレースです。しかしどうも歯車がかみ合わないかに見えたのですが... レースがスタートしてみたら昨日までの不調はどこかへ消えてしまったかのようです。
 特にハミルトン。予選タイムでは大幅に負けていたのに、トップを逃げていくウェバーにぴったりと付いて行き、2人だけ別次元のファステスト・ラップ合戦を演じました。一方、予選では絶不調で下位に沈んだバトン(彼は時々こういうことがありますが)。猛烈な速さを見せたわけではありませんが、しぶとく要所要所を押さえつつ、気がついてみれば4位まで上がりました。相変わらずレース戦略の上手さが光ります。
 優勝こそできませんでしたが、ハミルトンのレースでの速さ、バトンのレースの上手さ、そしてマクラーレンの底力を見せたレースだったと思います。土曜日までの不調は一体何だったのか?という疑問が残りますし、そこが一番の問題だとは思いますが。

 チーム批判をして物議を醸していたロズベルグはこのレースは絶好調で表彰台に上がれました。この好不調の波は一体何なのでしょう? 一方でミハエル・シューマッハは相変わらず。今回も10位あたりで一人暴れていました。そろそろ彼も「ここまでダメとは思っていなかった」という時期に入ってるのではないかと思います。(って書くと次で大活躍したりするのかも A^^;)

 次は2週間後、ドイツGP@ホッケンハイムです。