酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

2010年F1第8戦 カナダGP

 2年ぶりにカナダGPが開催されました。昨年は開催契約保証金で折り合いが付かず、という大人の事情でキャンセルされてしまいました。それ以外にも路面や施設、安全性の確保の面でも問題もありました。
 どういう決着がつけられたのか詳細は分かりませんが、1年のブランクですぐにF1カレンダーに復帰。カナダGPの開催と運営は市や州、政府が中心に行っています。モータースポーツに対する理解の深さというか文化の根付き度合いはヨーロッパ並み。うらやましい限りです。
 モントリオールのジル・ヴィルヌーヴ・サーキットの特徴と言えば、劣悪な路面と狭いコース。コンクリートウォールに囲まれた高速レイアウトな点。今回のレースは特に「路面の悪さ」が各チームを悩ませました。タイヤを上手く使いこなした者が勝ち、失敗した者が負けるというレースとなりました。

「首位でピットに入ったのに出たら4位にだったので驚いた」レッドブル/セバスチャン・ヴェッテル

 今シーズンここまで、マシンの速さという点でトップを行くのはレッドブルのRB6でした。しかし今回のレースを見る限り、そのアドバンテージは全く無くなってしまったかのようです。前戦トルコまではあんなに速かったのに。
 ソフトタイヤに苦しむハミルトンをつつき回して早々とピットインに追い込みトップに立ったあとは、自分のスピードで周回を重ねたはずのヴェッテル。ミスもなく普通に考えればその後ピットインしてもトップは守っているはず... でした。
 それがまさかの4位転落。この時点で今回のレースの先行きは見えたようなものです。その後も大きく遅れこそしないものの、前を捕らえそうな勢いは見られず。優勝争いからはほぼ脱落といった感じで周回を重ねるだけ。タイヤ戦略は悪くなかったのにこの結果というのは、むしろ問題です。
 うまくいかないレースの常としてラップタイムの上下も激しく安定しませんでした。ニューウェイ作の繊細なマシンは荒れた路面が苦手だっただけなのか? 他チームにスピード面で追いつかれてしまったのか? その答えを出すには次のレースを見極める必要がありそうです。いずれにしろ、ヴェッテルのチャンピオンシップにはそろそろ黄色信号が灯ってきました。

「このようなレベルのパフォーマンスは予想していなかった」フェラーリ/フェルナンド・アロンソ

 フェラーリの暗黒時代は再びやってきたのか?と思わせるような不調のトルコGPから一転、今回はフリー走行、予選から好調だったアロンソは、レースでも優勝争いの重要な役割を演じました。ソフトタイヤでのスタートこそ失敗だったものの、前を行くハミルトンをピットで逆転したり、Fダクト効果によりトップスピードが抜群に速いマクラーレンを、裏ストレートエンドでとらえて見せたり。十分に優勝できるだけのレス内容だったように思えます。
 強さは十分に感じさせましたが、今回はアロンソらしくない"バトル負け"のシーンが見られました。しかも重要なポイントで。特に終盤にバックマーカーの処理に失敗し、バトンに前に行かれてしまったのは全く余計なミスだったと思います。
 それでもポジティブなコメントばかり残しているのは、やはり優勝争いできる状態にある、と言うことが今は何よりも重要であり、驚きであったのだろうと思います。ただし、フェラーリの復調が本物なのかどうかは、これまた次戦以降を見極めないと何とも言えなさそうです。

「ルイスに約2秒より近づくことができなかった」マクラーレン/ジェンソン・バトン

 予選ではチームメイトのハミルトンの速さに対し、大きく精彩を欠いていたはずのバトン。今回のレースの一番の驚きは実はバトンの2位獲得、しかもハミルトンから2秒遅れだった、という点ではないかと思います。この結果は予選のパフォーマンスから想像できないものです。
 今回のレースはタイヤ戦略がキーとなりましたが、その点でバトンは最もレースマネージメントが上手いドライバーと言えます。もちろんタイヤ管理だけでなく、ライバル達との位置関係、作戦の違い、路面状況などなど、様々なファクターを正確に認識し、的確な作戦を正確に実行する力は、誰よりも優れていると言えます。
 優勝こそできませんでしたが、今回は実にバトンらしいレースだったのではないかと思います。しかし、ハミルトンまであと2秒届かなかった... という今回の結果は、一レースの偶然の結果と言うだけではなく、実はこの二人の差を的確に表しているのではないかとも思います。彼のチャンピオン防衛もかなり難しくなりそうです。

 その他気になったのは、ミハエル・シューマッハの暴れぶり。特にマッサをコース外に押しやったのは、ペナルティこそ出ませんでしたが、明らかにやりすぎだと思います。上海のレース同様にタイヤに手こずった今回のレースでしたが、クリーンな負けバトルができなくなったのはどうしたことでしょう?先が思いやられます。
 そして、小林可夢偉...。カナダでは一番やってはいけないクラッシュでした。しかもオープニングラップで。ペーター・ザウバーはかなりご立腹との噂。それもそうです。あの時点で意地を張って無理に10位を死守する必要は全くありません。「次がんばります」が通用する時期はもう終わりました。

 次は2週間後、再びヨーロッパに戻り、スペインはバレンシア市街地で行われるヨーロッパGPです。