酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

2010年F1第7戦 トルコGP

 3戦ぶりのF1観戦記です。スペインGPとモナコGPはタイムリーに見ることができず、つい最近ようやく録画観戦したところ。この2戦も語り尽くせないくらい色々なことがあって面白いレースでしたが、コースの性格ががらりと変わるこのトルコGPも、負けず劣らず先が全く読めない面白いレースでした。
 一番の見所はなんと言ってもレッドブルの2台とマクラーレンの2台によって繰り広げられた4つ巴のトップ争いです。誰もが誰かの独走を許さず、わずか2秒前後の間で4台が隊列を組んで走り続ける状況は、誰のファンにとっても希望と心配が混在する手に汗握るレースとなりました。

「テレビを見ていれば何が起こったかわかるだろう」 レッドブル/セバスチャン・ヴェッテル

 予選での不運を引きずったままかのような序盤を過ごした後、ピットストップでハミルトンの前に出てからの彼のレースぶりは、突如として忙しいものになったようです。後ろからはハミルトンにプレッシャーをかけられ、実際に何度か危ないシーンがありました。しかしそれを防ぎきった後、終盤の41週目にバックストレートで逆に前を行くウェバーに仕掛けます。
 あの瞬間の、まるで違うマシンかのような速度差はどこから生まれたのでしょうか?一説によると、ウェバーは燃費節約モードで走っていたのに対し、ヴェッテルはフルパワーで走っていたためと言われています。チームメイト同士の優勝をかけたバトルは、どちらも引かずに接触という結末を迎えます。
 ヴェッテルは接触の直前に、最終的にはマシン半分ほどウェバーの前に出ました。しかしその後急にラインを右(ウェバーのいるほう)に振っています。このライン取りが正しかったのかどうか?議論を呼んでいます。ウェバーの前に出たとは言え、ラインの優先権を手に収めるほどだったかと言えば微妙なところです。
 ここで行かなければ、ハミルトンにやられてしまうと言うプレッシャーの中で仕掛けたギリギリのオーバーテイクは見事でしたが、残念ながら成功しませんでした。ヴェッテルにとってもここでノーポイントとなったのは今後のチャンピオンシップに大きく響いてくることと思います。

「彼が突然右に向いたので驚いた」 レッドブル/マーク・ウェバー

 3戦連続の完全優勝を目指してトップを走っていたウェバーは、接触事故のもう一方の当事者にして、当初はこの事故の責任の大半がある悪者と言われていました。過去のウェバーのバトルぶりはあまり印象にありませんが、昨年のブラジルGPなどに代表されるように、あまりクリーンな戦い方をするというイメージはありません。
 しかし今回の場合、ヴェッテルとサイド・バイ・サイドのバトルに入る時点で、ギリギリ幅寄せをしつつもラインを1台分空けていたのは事実。車載カメラの映像を見ると、ヴェッテルが少し前に出た時点で突然に右に振ってきた動きに、反応できなかったようにも見えます。一方で彼にとって自分の正当性を主張する最大の論拠は「自分はラインを変えなかった」というこの点に尽きます。
 当然自分の責任は認めていませんが、ヴェッテルに対してもあまりはっきりしたコメントは残していません。いずれにしろ不幸中の幸いにして彼はレースにとどまり、なんとか3位でフィニッシュできました。これで堂々のポイント・リーダーです。

 今回の接触はレーシング・アクシデントだったとは思いますが、やはりスッキリしないものが残ります。ドライバー二人の曖昧なコメントはじめ、レッドブルチームに流れる微妙な空気がちょっと不気味です。裏のチームオーダー説も流れていてちょっときな臭いところです。しかしこういったドロドロした事件(事故)も、レッドブルがトップチームに仲間入りした証拠だと思います。これをマネージメントできなければ、その座に居続けることはできないでしょう。

「トラック上で戦うことが認められているが分別を持たなくてはならない」 マクラーレン/ルイス・ハミルトン

 漁夫の利で勝利をもぎ取ったハミルトンですが、レッドブルの2台の接触事故がなくても、彼のパフォーマンスはある意味優勝に値するものだったと思います。成功はしませんでしたが、序盤から何度も果敢にレッドブルの2台にチャレンジしていた走りは印象的ではあります。
 このレースのもう一つのクライマックスは、レッドブルが抜けた終盤。ハミルトンとバトンによるトップ争いです。ウェバーと同様燃費セーブの関係でバトンと速度差が生じ、一瞬前を奪われてしまいました。すぐにポジションを奪い返すことに成功したのは、バトンのミスなのか、奇跡だったのか、ハミルトンの腕と気合いだったのか? いずれにしても見事なバトルでした。
 その結果の上のコメント。コース上の暴れん坊として有名な彼の口から聞く台詞と思うと、ちょっと納得いかないものもありますが、今回のレースぶり、バトルぶりは確かにこのコメントに値するものです。願わくは、いつでもどこでもこの言葉にふさわしい戦いをして欲しいものです。

 リタイア続きだった小林可夢偉は満身創痍になりながらギリギリ1ポイント取れました。レース内容が今ひとつな感じでしたが、現在のザウバーの状況においては貴重な1ポイントになると思います。もちろん小林にとっても。
 次のレースは2週間後。再びヨーロッパを離れてアメリカ大陸へ。2年ぶりのカナダGPです。