酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

月下の恋人

月下の恋人 (光文社文庫)

月下の恋人 (光文社文庫)

恋人に別れを告げるために訪れた海辺の宿で起こった奇跡を描いた表題作「月下の恋人」。ぼろアパートの隣の部屋に住む、間抜けだけど生真面目でちょっと憎めない駄目ヤクザの物語「風蕭蕭」。夏休みに友人と入ったお化け屋敷のアルバイトで経験した怪奇譚「適当なアルバイト」…。珠玉の十一篇を収録。

Amazon.co.jp: 月下の恋人 (光文社文庫): 浅田 次郎: 本

 実は読んだのはもう随分前のことで、確か先月に香港に出張した際に、空港や飛行機やホテルなどでの暇な時間を過ごすときのために成田空港の本屋さんで買った本です。暇つぶし用なので、ある程度わかりやすくて面白く、かといって途中でやめられないほど面白くてもまずい... ということで、普通の厚さの文庫本にして十一編もの短編が収められたこの小説はうってつけだと思い買いました。
 確かに当初の目的はしっかりと果たすことが出来ました。つまり、旅先でちょうどこの一冊を読み切ったのです。が、内容的にはちょっと期待はずれでした。もっとわかりやすい小説だと思っていたのですが、実際はやや難解。小説も短くなっていくと詩に近づいてくると言うのか何というか。

 浅田ワールドらしい空気はぷんぷんと漂っているのに、いつもの盛り上がりを迎える前にぷっつりと潔く終わりを迎えてしまうもどかしさ。第一話の「情夜」はその最たるものだし、その後に続く学生ものもそうです。情景の豊かさ、ストーリーの面白さ、言葉の美しさ、人情味の深さなど、どれも文句ないはずなのにストレートに伝わってこないのです。

 多分誤解してるのだと思いますが「純文学」すぎるかなぁ?というのが正直な感想。もっと腰を落ち着けてじっくり味わうべき小説であり、旅先で暇つぶしに読むにはあまり向かないと思います。と言うわけで、読み方を間違えてしまった感じで勿体ないことしました。浅田次郎さんってこういうのも書くんだ、という発見はありましたが。

 敢えて言えば、私が一番気に入ったのは第七話の「回転扉」です。どことなくキングっぽくて好きです。そう考えると全体的にキングに通じる世界観があるかも。いつかじっくり腰を落ち着けて読み直してみたいと思います。

 【お気に入り度:★★☆☆☆】