酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

吉原裏同心(十二) 再建

 数ある佐伯泰英さんの文庫書き下ろしシリーズの中でも、実は密かに一番好きな作品だったりします。幹どのや汀女さまを始め、登場人物の魅力が際立っていることももちろん、吉原を舞台にしているとあってストーリーもどことなく艶めかしくて、吉原会所は今で言えば結構やくざな組織ですが、江戸の粋が凝縮しているようで格好いいですし、色々と楽しめるシリーズものです。

仮宅明け間近の吉原に、二人の遍路が野地蔵を置いた。先の大火で死んだ姉(女郎)の供養だという。だが、死んだはずの女郎を江ノ島で見たという男が現れた。足抜か?神守幹次郎は、会所の頭取の命で番方の仙右衛門と共に現地へ赴き、女郎に連れ添う居合いの達人と対決する。決着をつけ江戸に戻ってきた幹次郎を、新たな事件が待ち受けていた。シリーズ第十二弾。

Amazon.co.jp: 再建―吉原裏同心〈12〉 (光文社時代小説文庫): 佐伯 泰英: 本

 第八作目の「炎上」で吉原が全焼して以来、三作かけて仮宅営業中の吉原を舞台に物語が進み、そして今作ではいよいよ新しい吉原が再建されます。天明七年の吉原炎上はいろいろな小説で取り上げられましたが、その後再建までの仮宅営業時代をテーマにした小説はあまりありません。娯楽志向の強い佐伯泰英さんの小説ではありますが、時代背景はしっかり押さえてあり、仮宅営業ならではの事件の数々はとても面白いプロットでした。
 そして今回の吉原再建。これまでと同様に再建の様子を背景として、そのどさくさと上手く絡めた事件の展開。やはり期待通りの面白さです。でも、このシリーズ十二作目を迎え、何となく当初の緊張感というか新鮮味はどうしても薄らいできてしまいました。そして読み終えてしばらく経つとほとんど内容を忘れてしまうのです。でもこの手のシリーズもの小説はそれで良いのではないかと思います。
 読者が期待するのはもう一つの伏線のストーリーです。ゆっくりゆっくりと進むそれは、今回も一歩進展しました。内容の詳細は覚えていなくても、次回作への期待だけはしっかりと膨らんでいきます。いったいどうなってしまうのか!?

 【お気に入り度:★★★☆☆】

再建―吉原裏同心〈12〉 (光文社時代小説文庫)

再建―吉原裏同心〈12〉 (光文社時代小説文庫)