酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

紅の露 −梟与力吟味帳

紅の露  梟与力吟味帳 (講談社文庫)

紅の露 梟与力吟味帳 (講談社文庫)


 ついこの前に前巻となる「科戸の風」が発行されたばかりと思っていたら、いつの間にか最新刊が出ていました。ちょうどこのシリーズを原作としたNHK土曜時代劇「オトコマエ2」をやっている(今週末で最終回です)関係でしょうか。いずれにしろファンにとっては嬉しいことです。
 前作ではちょっと話が大きくなりすぎでは?と感じていましたが、今作では元の路線に戻ったようです。水野忠邦を筆頭とする幕閣の権力争いを背景としつつも、その結果として江戸市井で起きる末端の事件をネタとした捕物帖となっています。
 全体的に読みやすいのですが、その中身はと言えば、政治ドラマ、歴史解説、時代考証もあり。さらに捕り物としての冒険活劇、人間ドラマ、笑い、涙、色恋沙汰あり... と、盛りだくさんの要素が詰まった贅沢な時代小説です。
 特に今回は4組もの男女の恋愛が絡んだ展開。愛が報われぬ恋人達に涙しつつも、最後の落ちは爽やかでホット救われました。ちょっとドラマ仕立てでクサイですけど。逸馬の懐の深さと優柔不断に対し、信三郎の粋と真っ直ぐさが格好いいのです。八助は相変わらずのドジぶりです。
 さて、今作のテーマは一つの古い和歌で表されているようです。それは...

春やいつ 枝に分かれて 散る木の葉、それも時雨は 紅の露

 というものです。これは室町時代に読まれたものだそうです。その意味については... この本の中で仙人こと宮宅又兵衛が解説してくれています。

 【お気に入り度:★★★☆☆】