酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

2009年F1第9戦 ドイツGP

 前回のイギリスGPから3週間、F1はちょっと早い夏休みを挟んで、久々のレースがドイツのニュルブルクリンクで行われました。同じドイツのホッケンハイムをはじめ、ヨーロッパには数多くのオールドコースがありますが、このニュルブルクリンクもその一つ。ここはシルバーストーンとは打って変わって、中低速コーナーがメインのテクニカルコース。しかも標高が高い上にアップダウンが激しいという特徴があります。KERSの効きが良いと言われ、マクラーレンに復調の兆しが見えましたが、やはり空力とメカニカルグリップに勝るものはありません。結局レースが始まってみれば、ブラウンGPとレッドブルの一騎打ちになりました。

「一番大事なのは棚ぼたの優勝じゃないってことだ」 マーク・ウェバー/レッドブル
 今シーズン好調なレッドブルで、今期優勝しているのは若いベッテルだけ。ウェバーはそこそこ良い成績を残すものの、すっかりベッテルの陰に隠れた形になっていました。「彼は良いドライバーだけど優勝するような器ではない」と思われていた面も多々あったと思います。実際私もそう思っていました。
 しかし、前戦のイギリスGPからはベッテルに迫る勢いを見せ始め、ここドイツではとうとうポールポジションを取ります。レースではスタートに失敗してペナルティを受け、盤石な一人旅とは行かず出入りが激しいながらも、しぶといレース運びで見事、(結果的に)ポールtoウィンを飾りました。ウェバーのコメント通り、これは2強の4ドライバーの中で競り勝って手に入れた、正真正銘の優勝です。

 ミナルディでのデビューから早8シーズン目。速さと巧さは常に見せてきたのに、これまでは何か一つ足りませんでした。それは何か精神的なものなのか、あるいは単に勝てるマシンだったのか。ポイントランキングでは2位のベッテルにわずか1.5ポイントまで迫っています。

「本当に満足しているなんて言ったらウソになる」 セバスチャン・ベッテル/レッドブル
 強さに陰りが見えてきたブラウンGPを尻目に、今やもしかしたらチャンピオン候補のNo.1に挙げられる勢いのベッテルですが、今回は予選でのスーパーラップが不発に終わり、4番グリッドに沈んだ時点でかなり厳しいレースが予想されました。しかもスタートでは大きくポジションを落としてしまい、第一スティントでコバライネン・トレインにつきあわされてしまうという、不運に次ぐ不運の展開。しかし、基本的な速さはやはり圧倒的で、第2スティント以降でタイムを稼ぎ、なんとか3ストップ作戦のブラウンGPの前に出ることに成功。序盤からは思えば2位フィニッシュは願ってもない結果に思えます。

 まだシリーズチャンピオンに手が届くかも知れないことに実感が沸かないのか、単純に天然なのか、実に陽気で前向きで自然なコメントが目につきますが、気がつけばランキングは2位に浮上。しかし1.5ポイント差でウェバー、さらに1.5ポイント差でバリチェロと争っています。もしポールが取れていれば... いや、せめてフロントロウにいれば...。レースに"もしも"はありませんが、本人は少し悔やむ点があるはずです。

「全てチームのせい」 ルーベンス・バリチェロ/ブラウンGP
 2番グリッドからスタートし、ウェバーと交錯しながらも第一スティントをトップで駆け抜けたバリチェロ。今回こそは優勝できるのでは?と誰もが思ったし、本人もその手応えがあったのでしょう。しかしレッドブルなどのライバル達が2ストップ作戦なのに対し、ブラウンGP勢は3ストップ作戦。そう考えるとペースはむしろ少し足りませんでした。
 一人旅の第一スティントでは十分なギャップが稼げず、1回目のピットストップが終わってみれば、ペースが圧倒的に悪いマッサの後ろに入ってしまいます。そのまま9周を無駄にしたうえに、ペースはその後も上がりません。チームの戦略よりも何よりも、マシンにそれだけの速さがなかった、というのが正しいのではないかと思えます。

 彼がこんなに怒ってる理由は、最後の最後でバトンに前に行かれてしまった点にあるのではないかと思えてきます。バトンも遅い車に引っかかって決してペースが出せていたわけではありません。バリチェロのスピードがそれ以上に足りなかったのも事実ですが、やはり2回目のピットミスも大きく響いていそうです。この点も含め、信頼関係が崩れているのだとしたら、チームにとってもバリチェロにとっても不幸なことです。

「エンジンとギアボックスをセーブしよう」 ルイス・ハミルトン/マクラーレン
 ようやく復活の兆しを見せてきたマクラーレン。ハミルトンは予選でも久々にQ3に残り、スタートもKERSを利用して大きくジャンプアップ。しかし、そのオープニングラップは無理しすぎたのか、結局他のマシンと接触してタイヤをパンクさせてしまい、レースは最後尾からやり直しに。この時点で彼のモチベーションはぷっつり切れてしまったのでしょう。

 ハミルトンは無線で、上のような言葉でもって「もうこのレースをリタイヤしよう」と提案しますが、チームからは「雨が降るかも知れないからそのまま走れ」と説得されます。これはなかなか面白いやりとりでした。ハミルトンの我が儘のようですが、気持ちは分かります。一方で、わずかな可能性に賭けるチームの気持ちも良く表れている会話でした。

 やる気のないマクラーレンが周回遅れになるシーンが何度もTVには写っていましたが、結局ハミルトンは最下位でレースを完走しました。


 その他、因縁のスーティルとライコネンの絡みとか、中嶋はやっぱりポイントが取れなかったけど、ロズベルグはちゃっかり6位に入ったりとか、細かく見ると色々あった盛りだくさんなレースでした。次回のレースは2週間後、ハンガリーGPです。