酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

湘南食堂@蒲田

 春のこの時期は生しらすの季節です。むしろ4月下旬だと終わりかけの方かも。そんなこともあってか、いつもの飲み仲間が突然「生しらすが食べたい!」と言い出したので、我々には珍しく遠征してみることにしました。東京近郊で生しらすが食べられる場所と言えば、鎌倉、江ノ島、湘南方面です。おそらく伊豆や静岡まで行ってもあるでしょう。でも、思いつきでわざわざ飲み食いに行くには、鎌倉はちょっと遠すぎる気が。せっかく行くなら日帰り遠足で行かなくては。もっと近いところで生しらすが食べられるところ... と調べると、ありました。京浜東北線の東京都最南端に位置する、蒲田です。ここに湘南の海の家をイメージしたという湘南食堂というお店があります。

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ブルー基調の洒落た雰囲気のお店です。ここでうまい刺身とうまい酒が飲めるというのは本当か?

 蒲田駅東口を降りて徒歩約5分。慣れない土地なのできょろきょろしながら地図を眺めるも、なかなか見つかりません。商店街から1本入った路地にあるお店は、なんだか喫茶店風の外観。店内もちょっと古めかしい地元のそれ系のお店な感じです。1階は満席とのことで2階に案内されると、そこは誰もいなくてガラガラでした。ホール係がいまは1人しかいないので、ちょっと不便かも、と言われつつ入ってみました。内装もブルーに塗られて、テーブルや椅子、インテリアなども微妙な感じです。ある意味「湘南の海の家」なのかも。正直なところ「生しらす」を出すようなお店とは思えません。もしかしたらこれは失敗なのかも?という思いが頭をよぎります。

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お目当ての生しらす。甘くてすごく美味い!お代わりしてしまったほど。

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マコガレイの刺身。三崎の朝捕れです。白くて薄くてふぐみたい。

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鯵のなめろう。味噌味が絶妙。量もたっぷり。

 しかし、しばらくしてその微妙感は見事に打ち砕かれました。レギュラーメニューのほかに「本日のお勧め」という手作り感あふれる一枚ぺらのメニューがあるのですが、そこに並んだお刺身の数々は、見てるだけでおいしそうなものばかり。本物感が漂います。やっぱりここは海鮮系の飲み屋だよね?という内容。そして出てきた料理は、目当ての生しらすはじめ、ヒラメ、アジなどなど、何でもないけど新鮮な食材を、定番通りにきっちり料理した本物ばかり。量は控えめだし、メニューを見る限り結構いい値段するのですが、十分に満足できるレベルです。

 とりあえず最初の乾杯だからと言って生ビールを飲んでいたのですが、おいしいお刺身の数々を前に、これは日本酒でしょ!と、すぐにスイッチ。しかも日本酒メニューも、数こそ多くありませんが、渋い銘柄が揃っています。

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春野菜とメゴチの天ぷら。もちろん揚げたてです。

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美人ネギとクジラの竜田揚げ。洋風な盛りつけです。

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牛ヒレカツ。中は半生でわさびを乗せて醤油で食べると美味すぎ!

 お刺身以外にも煮物、揚げ物、焼き物も豊富にありました。食べてみたのは上の写真にあるような揚げ物ばかりなのですが、突然盛りつけがサラダ付きで洋風になったり。この辺がただの海鮮料理屋ではなく"湘南食堂"たる所以なのでしょうか。しかしもちろん、これらの揚げ物もファミレスや居酒屋チェーン店のそれとは違います(いや、それはそれで美味いので大好きです^^;)。

 クジラの竜田揚げは懐かしい味がしました。時々食べるクジラ料理は「こんな味だったっけ?」と思うものが多いのですが、どちらがクジラ本来の味かどうかは別にして、あの懐かしいうまみを感じられたのは久しぶりです。そして大ヒットだったのは牛ヒレカツ。衣はパリッと揚げてるのですが、中身は半生。わさびをのせて醤油をつけるとおいしいですよ、とのアドバイスをうけ、その通りにして食べてみると... もうこれは美味しすぎです。

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軟骨入りつくね。手前がタレで奥が塩。決められないので両方もらいました。

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めふん(鮭の内臓)です。お酒が相当進みます。これだけでご飯が二杯は食べられそう。

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いい料理があると日本酒がより美味しく飲めます。

 お酒は一合の片口で出てきますので、人数がいればいろんなお酒を少しずつ味わえます。料理がよかったせいか、お酒もよりいっそう美味しく感じました。この日飲んだのは、一の蔵(宮城)、くどき上手(山形)、ばくれん(山形)、八海山(新潟)、醸し人九平次(愛知)です。基本的に辛口のお酒しか置いてありませんでした。どれも料理に合っていて美味しかったです。

 メニューを見ていて、一品一品が結構なお値段するので、思い切り食べて飲んでしまったからには覚悟していたのですが、精算してみると思ったより高くありませんでした。WEBのクーポンを使って一人\5,000でおつりがきました。これは飲み食いの満足度に比べると、かなりお得感があります。


 湘南食堂  東京都大田区蒲田5-24-6  TEL: 03-5703-3131  11:00~13:30, 17:30~23:00  日曜定休
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 生しらすはじめ美味しい海鮮料理その他と日本酒を堪能していい気分になったところで二次会です。土地勘が全くないので困ったのですが、こういうときにこそ我々の勘と嗅覚は最大限に働きます。と言うことで、何となく吸い込まれて行ったのは、湘南食堂からほど近い裏路地にあった立ち飲み屋でした。暖簾をくぐって覗き込むと、ラーメン屋みたいな作りの、カウンターしかない店内はガラガラです。空いてる店にいい店はなし... なのか?

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とてもいい雰囲気。見知らぬ町の見知らぬ店なのに居心地がいいです。

 愛想のないおじさんと、おばあさんが立ち働くお店。常連さんらしきお客と会話するでもなく、静かな店内。基本は串焼きがメインのようです。お刺身や焼き物も少しあります。二次会なので飲みも食べ物も軽くということで、珍しいウナギの串焼きと酎ハイをいただきました。

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うなぎの串焼き。食べたの初めてかも。焦げるくらいがちょうどいいです。

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うなぎの肝焼き。これも食べたの初めて。香ばしくて肝っぽい苦さもあって美味いです。

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王蟲... じゃなくてアボガドの刺身。

 途中で若者三人組がどやどや入ってきて、ビール飲んで串焼きを食べてさっと去っていきました。最初からいた常連さんは相変わらず隅っこで一人で何か飲み食いして本を読んでいます。お店のおじさんとおばあさんは、店内に置いてあるだるまや招き猫、鉄道模型などをあれこれ話題にしている私たちにも、一向に構ってきません。唯一、最後に料金を数えるための食券代わりのプラスチック札について訪ねたときだけ、うれしそうに意味を教えてくれました。常連さんも会話に加わったりして。本当は人なつっこいのでしょう。

 立ち飲み屋というと、猥雑でうるさくて店員さんも常連さんも馴れ馴れしくて... というイメージがありますが、静かで自然なこのお店は、なぜかとても居心地がいいのです。空いていてお店がやっていけるんだろうか?なんて心配は野暮ってものです。なんだか分からないけど、ここに必要とされているお店だという気がします。

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料金は串ではなく、このプラスチックの札で数えます。

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蒲田恐るべし。

 初めて飲み歩きにきましたが、蒲田はいいところです。たぶん、東京周辺の下町はどこでもこんな感じかもしれません。時々なんでもないところへ遠征してみるのもいいものです。


 立ち飲み かるちゃん  東京都大田区蒲田5-23-5  TEL: 03-3733-3788  17:00~