酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

いっちばん:畠中恵

いっちばん (新潮文庫)

いっちばん (新潮文庫)

 

 大人気「おそろし」を買うときに迷った本です。結局期待していたとおりこの本は友人から手に入れることが出来ました。このシリーズは、日本橋通町にある大店長崎屋の病弱な若旦那「一太郎」と長崎屋に住み着くたくさんの妖たちが引き起こすコメディドラマです。荒唐無稽でナンセンスな出来事の中にも、緩くて柔らくて暖かい江戸時代の風情が感じられ、リアリティとかそんなことはどうでも良くて若旦那と妖(あやかし)たちの世界に引き込まれていきます。

 廻船問屋兼薬種問屋の跡取り息子としての自覚が芽生え成長しようとする一太郎を始め、好きなのに下手くそな菓子作りの腕を上げるべく大きな菓子屋に修行に出てる一太郎の幼なじみの栄吉。難しい事件を抱えては長崎屋に菓子を食べに来る頼りにならない日限の親分。於りんの迷子事件で一太郎と知り合った紅白粉問屋の跡取り娘で厚化粧のお雛。三途の川で知り合った冬吉とその兄弟などなど、今回もたくさんの個性的な"人"が登場します。

 そして一太郎の世話役として一太郎の祖母である大妖から派遣されている仁吉(白沢)と佐助(犬神)、家を軋ませる子鬼で菓子好きの鳴家(やなり)たち、一太郎の部屋にある屏風の付喪神(つくもがみ)で口が悪い屏風のぞき、その他鈴彦姫、見越の入道、野寺坊、そして天狗に稲荷の狐や狛犬などなど、この世の者ではないおかしな妖たちも相変わらずたくさん登場します。特に子鬼の鳴家たちはその滑稽で純真な行動、「きゅわわ!」という鳴き声、そして挿絵に描かれているイラストも可愛くて、多分このシリーズのファンの中では一番人気と思われます。私も家鳴りが大好きです。人には見えないけれど、いつも人間の周りをうろついている... ということを本気で信じたくなるほどです(^^;

 このシリーズは小説新潮ほかに連載されているため、一応各話毎に簡単に登場人物たちのプロフィールの説明があります。単行本を読み続けてきた一ファンとしては、それがもどかしいくらい。そして第七巻ともなると各登場人物や妖たちのキャラクターや行動もある一定のパターンではっきりと固定されてきます。でもマンネリと感じたり飽きが来たりと言うこともなく今作も十分に楽しめました。

 主人公の一太郎は病弱な金持ちのお坊ちゃんという立場なのになぜかストーリーは基本ミステリー仕立て。一太郎の周囲で起こる色々な事件に巻き込まれ妖たちと協力(?)しながら解決していきます。今回は一太郎、栄吉、そしてお雛といった若者たちのそれぞれの独り立ちにまつわる話が中心でした。ただ面白おかしいコメディばかりではなく、ちょっとまじめでシリアスな青春ドラマ仕立てになっています。その辺のバランスの良さは上手く出来ています。最もこれは過去六巻にも共通していたことですが。

 ちなみに今回のタイトル「いっちばん」ですが、これは鳴家に由来しているものです。鳴家達は一太郎の周辺にいる妖たちの中でも、感覚的に最も人間から遠いところにいるというか、ほとんど5歳児も同然の妖と言えると思うのですが、何事も一番になることが大好きなのです。そして今作のなかでも一番になるべく奮闘したり、狛犬にさらわれたり、罠にはまったりと大活躍(?)です。うーん、かわいい...(A^^;

 なお、新潮社のWEBサイトにしゃばけシリーズの特設サイト「しゃばけ倶楽部~バーチャル長崎屋~」を今更ながら発見しました。ここで配布されている鳴家の壁紙は速攻ダウンロードして使っています。それから昨年の「しゃばけ」に続きことしもフジテレビで「うそうそ」がドラマ化されるそうです。昨年放映されたドラマの出来映えを見てないので何とも言えませんが、ちょっと見てみたい気がします。でも、鳴家はどうやって実写で表現されるんだろう。実写とアニメ混成ならいいけど... と思ったら変な人形みたいなのが使われたようですね。全然イメージ違う... (-_-#

 おすすめ度:★★★★☆